- 滑落した人が目の前に落ちてきた体験について
- 滑落事故現場である西沢渓谷について
- 滑落した人が目の前に落ちてきた時の状況について
- 女性の怪我の状況と携帯の電波について
- 滑落事故を警察・消防に通報するため登山口に戻った時の様子について
- 滑落した人の怪我の具合と滑落原因について
- 滑落事故の救助のお手伝いをして思ったこと
- まとめ
滑落した人が目の前に落ちてきた体験について
今までの人生において、目の前で滑落事故の目撃と、山岳救助のお手伝いを2回ほど経験しているのですが、今日はもう1つの出来事を書きたいと思います。
登山を始めて20年位経つのですが、ここ数年は、年間60日前後は山に出没しております。
単純計算で、1,000日位は山の中に入っていると思われるのですが、それで2回の滑落事故の目撃・救助のお手伝いは、多いのか少ないのか意見がわかれるところですよね。
ちなみに、私自身は滑落して大きな怪我をした事はありません。
※小さな怪我は何度もあります。
また、クマに襲われたこともありませんが、お金を拾った事は何回かあります。
あと、「登山地図」や「カメラ」、「スマホ」、「ストック」、「お弁当」等、色んな物を拾った事が有ります。
山の中は、「宝の山」だと思い、下ばかり見ながらいつも登っております(笑)
今回の滑落事故が、生まれて初めての救助経験だったもので、色々とパニックになり大変でした・・・・
滑落とか救助は、自分には関係ないと思っていたのですが・・・。
前回書いた「丹沢山塊での滑落事故の顛末」は、下記リンクになります。
こちらの記事の方が、今回よりも滑落事故の救助要請の内容が詳細だと思います。
話を西沢渓谷の滑落事故に戻しますが、滑落した登山者が目の前に落ちてくるという、中々体験できない出来事になりますので、詳細に書いていきたいと思います!
滑落事故現場である西沢渓谷について
今回の滑落事故現場は、山梨県にある紅葉や新緑がとても綺麗で有名な「西沢渓谷」が舞台でございます。
西沢渓谷は、「日本名瀑百選」に選ばれている、「七ツ釜五段の滝」をはじめ、綺麗な滝を多く見ることができ、一周約5時間ほどで歩ける感じなので、ハイキングシーズンになると凄い賑わいになります。
ただ、「渓谷」になりますので、沢沿いを歩きますので、どうしても少し危ない所が何ヵ所かあり、観光気分で臨むには少し厳しいコースでもあります。
今回の滑落現場周辺の西沢渓谷についてご存じない方もいると思いますので、詳細につきましては、下記リンクが分かりやすいので添付しておきます。
「観光地」と言う事も有って、まさか「滑落事故」に遭遇するとは夢にも思っておりませんでした。
<西沢渓谷情報サイト>
<西沢渓谷ガイドマップ>
https://www.yamanashishi-kankou.com/sozai/asobu/nature/nishizawa002.pdf
滑落した人が目の前に落ちてきた時の状況について
今から10年位前になるんですが、写真好きの会社の同僚と2人で西沢渓谷に出没した時でございます。
紅葉が最盛期の時期だったので、かなり混むと思い、少し早く駐車場から出発いたしました。
また、西沢渓谷の写真を撮り終わったら、奥秩父の「長瀞渓谷」へ行く予定でした。
これが功を奏し、ハイキングしている方もまばらで、かなり快適に写真撮影をする事が出来ました。
西沢渓谷のメインディッシュである、「七ツ釜五段の滝」の手前にある、「三重の滝」で写真を撮っていた時でございます。
こちらが滑落事故現場である、西沢渓谷の「三重の滝」の場所になります!
登山道の上の方から
「ガサガサガサ~~!!!」
と、木々を掻き分ける大きな音が聞こえ、それと同時に
「キャッ、キャッ~キャ~~~~~!!!」
と女性の大きな悲鳴が小刻みに聞こえてきました。
凄い切迫した悲鳴だったので、
「なんだこの音?登山道に熊でも出て襲われたのかな?大丈夫か!?」
と思い、我々2人にも緊張が走りました。
木々を掻き分ける音がどんどん大きくなり、それに比例して女性の悲鳴も大きくなってきたので、
「上で何が起こっているんだ?」
と、気になり、二人で見上げながら様子をうかがっておりました。
すると、斜面から凄い勢いで30代前後の女性が尻餅(仰向け)をついたような状態で、私達の目の前に滑り落ちてきました。
地形図に少し加筆してみたんですが、赤丸が私達で、紫色の星の地点が滑落地点になりまして、矢印な感じに滑り落ちてきました。
地形図を読める方なら直ぐ分かるかと思いますが、斜面の最後が3~5m前後キレ落ちており、かなりのスピードが出ていたので、着地の衝撃音が凄い音でした。
地形図からすると、斜面を20~30mは滑って落ちているのではないかと思われます。
むしろ、あと少しで三重の滝の滝ツボに落ちてしまうほどの勢いだったのですが、なんとかギリギリの所で止まった感じです。
不謹慎ながら、我々の上に落ちて来なくて本当に良かったです。
滑落事故に連鎖して、拳よりも大きな石が落ちてきたので、危うく巻き込まれるところでした。
女性の怪我の状況と携帯の電波について
呆気にとられながらも、腰と首、後頭部を強く打って怪我していることが容易に想像でき、直ぐに女性のもとへ駆けつけました。
話し掛けると意識はあるものの、受け答えが全然出来ない状態で、口からかなり血を流しており、どんどん顔色が真っ青になってきました。
滑落中に、木々にもぶつかったみたいで、顔や手に痛々しい感じの切れ傷もあり、衣服も少し破けておりました。
滑落した女性に名前を聞いても答えられず、うめき声だけ発しておりました。
直ぐに「これはヤバイ!!」と察し、携帯電話で119番通報いたしました。
すると、2台とも電波が圏外(私と同僚はdocomo)で連絡がとれず、電波がある所を色々と探したんですが、結局見つけられませんでした。
今なら繋がるのかも知れませんが、あの当時は本当に携帯の電波が弱く、圏外の地域が多かったですよね。
滑落事故を警察・消防に通報するため登山口に戻った時の様子について
「こりゃ~西沢渓谷の駐車場の近くにある「お土産屋さん」まで戻らないと警察・消防と連絡がとれんな~」
となり、同僚が看病し、私が走って駐車場まで戻る事にしました。
途中で女性のご家族(?)の方とすれ違ったので、
「警察・消防に救助の連絡をしに駐車場まで戻ります。」
と伝え、一生懸命走り出しました。
西沢渓谷の登山口まで戻るといっても、コースタイムで1時間位の道のりなのですが、私も急な滑落事故にパニックになってしまい、大事な「水」と「携帯電話」、「財布」を忘れてしまいました。
何故か「登山地図」を握りしめて私は走っていたんですが、なんででしょうかね?
今でも謎の行動なのですが、人間パニックになると、良く分からん行動をするんでしょうね!
火事の時に、ヤカンや枕を持って逃げるのと同じなのかも知れません。
地図はあるものの、途中で携帯電話を忘れた事に気づいたんですが、戻る時間が勿体無いので先に進む事にしました。
これが大失敗でした!
暫く進むと単独の登山者がコッチに向かって来るのが見えました。
「女性が登山から滑落して怪我をしてしまったので、電話を貸してもらえませんか?」
とお願いいたしました。
すると、その方は快く貸してくれたんですが、やっぱり電波が入らず諦める事にしました。
更に駐車場の方へ進んで行くと、ご夫婦の登山者?(格好からすると観光客かも?)が向かってきたので、事の顛末を説明し携帯を貸してもらえないか尋ねました。
仕方がなく、滑落事故現場から西沢渓谷の登山口へ進んでいくと、50代~60代位のご夫婦の登山者?(格好からすると観光客かも?)が向かってきたので、滑落事故の顛末を説明し携帯電話を貸してもらえないか尋ねました。
すると、
「なんでお前に貸さなければらないんだ。不注意で滑って落ちたのが悪いんだろ。仲間ならお前が何とかしろ。」
と、凄い剣幕で怒鳴ってくるではないですか。
まさか、そんな事を言われるとは思わず、かなり驚いてしまいました。
こいつにお願いしても埒があかないと思い、
「私の仲間ではない。無理なら結構です!」
と、怒鳴ってしまいましたf^_^;
今思うと、私も頼んでおきながら「大人気ない」ですよね・・・
若気の至りってやつですね~~。
隣に居た奥さんが、小さな声で謝ってきましたけど、ま~貴方も同罪ですかね。
「なんで滑落した人間と関係ない私がこんな目に遭わなければならんのだ。」
と、思いながら走り続け、次に会った方は
「携帯忘れた。」
その次の人は、
「他人に貸したくない。」
との事で、冷たい連中ばかりでした。
その後も何人かと登山者とすれ違ったのですが、も~頼むのも面倒なので・・・
よ~やく西沢渓谷の登山口付近にある「お土産屋さん」に着き、事情を説明すると、
「なんだよ。また事故かよ。いい加減にして欲しいんだよな~。迷惑なんだよ。」
と、またまた冷たい対応でしたf^_^;
ただ、「固定電話」を貸してくれたので、その点は有難かったです。
119番通報すると、既に救助の連絡がされておりました。
その時は分からなかったのですが、残って看病していた同僚の話から勘案すると、私に携帯電話を貸してくれなかったと思われる人物が、先に警察・消防に通報したみたいです。
※ボーダーフォンだったかな。珍しくそっちは電波が繋がったみたいです。
私は「第2通報者」と言うことで、同じ滑落事故なのか?、違う事故なのか?を確かめないといけないとの事で、名前、住所、事故の状況、滑落者との関係などを根掘り葉掘り聞かれました。
やり取りをした結果、
「救助ヘリが向かっている。地上からも向かっているが、街から遠いのでとても時間が掛かる。」
との回答でした。
警察・消防と連絡がついたので、滑落現場に戻ることにしたのですが、水もお金もなく、喉がカラカラで死ぬ思いで帰還しました。
桂事故現場から往復2時間の道のりを水なしで歩くのは、ちょっと難しいですよね。
事故現場に戻る途中に救助のヘリコプターが到着し、木々の隙間から滑落した女性を引き上げているのが見えたのでホッと致しました。
ヘリコプターとは言え、滑落事故の通報を受けてから1時間以上経ってからの到着なので、山の中で事故が起こると、直ぐには救助が来ないことが分かりますよね。
滑落し、怪我してから2時間以上は経っているので、緊急を要する場合は手遅れになりますよね。
滑落事故現場付近に戻ると、救助ヘリコプターから降りて来た隊員と、ご家族の方、第一通報者と思しき3人で色々と話をしてました。
滑落した女性と一緒に歩いていた方が、2人(両親?)居て、もう1人は付き添いの為、怪我した女性と一緒にヘリコプターに乗ったそうです。
家族と思われる方が、しきりに第一通報者と思しき人に頭を下げ、「ありがとう、ありがとう」と感謝している姿が見えました。
3人がいる所へ行こうかと思ったのですが、今まで看病し、一部始終を見ていた同僚も蚊帳の外だったので、
「時間もアレだし、も~行こう。」
となり、合流する事はしませんでした。
歩き出そうとすると、1人のおばちゃんが家族の方に向かって叫びました。
「ねーねーあなた、この方(私の事)は登山口まで走って連絡しに行ってくれたのに、お礼も無いの?」
結局、滝の音で聞こえなかったみたいで、お礼のひとつもありませんでした。
ま~何も無くて良いのですが、骨折り損のなんちゃらでございます。
同僚の方も、お礼の1つもなかったそうです。
通報するなら、なんであの時携帯電話を私に貸してくれなかったんだろ?
未だに答えが出ません。
ま~私の事を「不審者」とでも思ったのかも知れませんね。
毎朝、鏡に映る自分の姿を見ては「絶望」しているので、その気持ち、分からんでもないのですが・・・(苦笑)
その後、先に進み昼飯を食べていると、さっきのおばちゃんが追いつき、私達に話し掛けてきました。
「あなた達が一番の功労者なのに、誰も分かってないわよね・・・私は褒めてあげるから。これ、食べて。」
小さなチョコと袋に入ったお煎餅をいただきました。
嬉しかったな~♡
も~少しアレなら惚れてしまったと思います(笑)
同僚の話だと、このおばちゃん、事故現場から少し先の所を歩いていたものの、凄い悲鳴が聞こえ、引き返してくる途中に、私の走り出す後姿を見ていたそうです。
※おばちゃんの携帯電話も圏外で繋がらず。
滑落した人の怪我の具合と滑落原因について
結局、「2次通報者」だったこともあり、消防や警察等から後日問い合わせも無く、そのまま終了となりました。
次の日?だかに、地元の新聞にこの滑落事故が載ったそうですが、も~興味も無く読むことはしませんでした。
そんな感じなんで、滑落した女性の怪我の具合も分かりません。
滑落の原因は、写真撮影に夢中になり、登山道を踏み外して滑って落ちてしまったそうです。
その当時、滑落があった場所の斜面側に手すりやロープが付いてなかったのですが、現在はシッカリ設置してあるので、事故後に設けたのだと思われます。
私も写真撮影が好きなもので、夢中になってしまう気持ちが痛いほど分かるのですが、歩きながら撮影したり、崖の近くで撮影中に体勢を崩して滑落事故を起こした事例もありますから注意が必要ですよね。
今回は、滝壺の近くで木々がなく、救助のヘリコプターが現場まで簡単に近づけて収容できたからこそ早かったですが、それが上手くいかなかったら事態はさらに深刻だったと思います。
我々が現場から立ち去る直前に、街から駆け付けた救急隊員が到着したので、ヘリコプターが駄目だったら病院まで何時間かかったか想像できません。
この女性、滑落事故に遭われて災難だったと思いますが、もし、あの時勢い余って滝壺に落ちてしまっていたならば、さらに深刻な状況だったと思うので、その点はラッキーでしたよね。
2次災害になりますので、あの流れの早い滝壺に飛び込んで、救助しようとは思わなかったと思います。
結局、この影響で我々の行程もかなり遅れてしまい、1日の計画が全てくるってしまいました。
滑落事故の救助のお手伝いをして思ったこと
私は、「人間嫌い」と公言しているのですが、今回の件が1つのキッカケです。
他人なんて当てにできませんし、世間は思った以上に冷たいもんです。
「山好きに悪い人はいない」とかよく聞きますが、とんでもない!!
全てとは言いませんが、一定の割合で悪い人間がいるのが登山者です。
お土産屋さんの対応もそうですが、地元の方は冷めた目で我々登山者を見ております。
西沢渓谷は、入念に登山道に鎖やロープが設置されているので、それだけ事故が多いんだと思います。
普段、山歩きをしない観光客も来るところですから、ま~想像できますよね。
今回の滑落事故の救助のお手伝いをして思ったことが、
「何かトラブルがあっても自分で対応できるスキルと体力を身につけよう。」
と、心に誓いました。
山登りをしている方にとっては当たり前の話ですが、あの当時の私にはその気持ちがありませんでした。
「自己完結できる装備と知識(技術)と体力が、貴方にはありますか?」
私にとっても耳が痛い問いかけなのですが、啓発をこめて書かせていただきました。
少しでも滑落事故が減って、登山者のイメージが良くなって欲しいよな~って願わずに入られない今日この頃です。
も~滑落事故現場で救助のお手伝いはしたくありませんが、また現場にかち合ってしまったならば、面倒臭いことは重々承知で駆けつけてしまうと思います。
困っている人が目の前にいるのに、手を差し伸べない、そんな冷たい人間にはなりたくないです。
今回、冷たい対応をした貴方達。
将来、貴方が「滑落事故の主役」にならないと本気で思っておりますか?
不運にも滑落事故の主役になった時、周りの人間が誰も助けてくれなかったら、貴方はどのように思いますか?
事故に遭いたいと思っている人なんて一人もいません。
「困った時はお互い様!」の精神を忘れたくないもんですよね!
まとめ
とても後味の悪い、西沢渓谷での滑落事故の顛末でした。
いくら気をつけていても、登山やハイキングに怪我はつきものです。
今回は、滑落事故の救出者としての立場でしたが、いつ、逆の立場になるか分かりません。
どんな山にも滑落事故のリスクがある事を忘れないようにしたいものですよね。
長々とした記事を最後まで読んでくださり、誠にありがとうございました。
滑落事故を始め、山岳遭難などによって起こりうるリスクについて色々と記事にしておりますので、良かったらご参考にしてみて下さい!
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