登山中の落石体験談について
前回は、登山などでの遭難の原因や、事故件数などの統計からゴチャゴチャ書いてしまいましたが、今回は、私自身が体験した「登山中の落石体験と対策」について書いていきたいと思います。
前編の落石と山岳事故について書いた記事になります!
登山中に落石に遭った季節は6月頃になります。
奥秩父山塊の甲武信ヶ岳の「シャクナゲ」が最盛期だったもので、それを見たいと1泊2日でテント泊で縦走した時に落石に遭いました。
その年の奥秩父周辺の山は、シャクナゲの当たり年で、とても綺麗でした♡
しかしながら、数日前から定期的に雨が降り、その日も湿気がムンムン♡な感じだったので、その影響で地盤が少し緩んでいたのかも知れません。
登山コースにつきましては、下記の通りでございます!
幕営地は、日本三大峠の1つである「雁坂峠」近くにある「雁坂小屋」で1泊いたしました。
小屋番さんが大変良い方で、「食飲研修」と称して小屋に呼んでいただき、お酒を酌み交わし楽しい一時でした!!
※雁坂小屋の小屋番さんのお二人です。
話の流れで、「明日のコースについて」聞かれました。
「アオヒゲさんは、明日は何処から下山を考えているの?」
「はい!甲武信ヶ岳から十文字小屋に行って、そこから未踏の柳避難小屋経由で栃本へ下山するつもりです。」
こんな感じに返答すると、ど~も浮かない表情に変わり、思わぬ返事をいただきました。
「そのコースは道が悪く、切れ落ちた処もあるから、お勧めしないな~・・・。」
「踏み跡が薄い所もあるし、結構、道迷いが多いんだよね~・・・。」
「歩く人も少ないし、なんか有ると助けが来ないから違うルートの方が良いんじゃない!?」
暗に「そのコースは行かない方が良いよ!」と、言ってる感じでしたf^_^;
「危ないところがあったら素直に引き返します。」
と伝え、その日は終ったんですが、翌日歩いてみると・・・
こちらが途中にある、「柳避難小屋」になります。
雰囲気が良い所にある避難小屋なのですが、ここまで踏み跡が薄い所があったものの、さほど難しい箇所も無く・・・って感じでした。
しかし、ここから先が中々痺れる区間の連続で、雁坂の小屋番さんが話していた事が理解できましたf^_^;
写真のような、急斜面に細いトラバース道が続き、踏み外すと簡単に滑落してしまう感じで、油断ならない時間が続きました。
そして、全く想定してなかった「落石」の時間が迫ってきました・・・
登山中に落石があった場所について
こちらの地形図の「赤丸」付近に差し掛かった辺りで、進行方向の上部から「熊鈴」が聴こえ、段々と近づいてきました。
十文字小屋から初めての登山者だったのですが、地形図から分かる通り、等高線が非常に混みあっている事が分かると思います。
地形を読める方なら説明は不要だと思いますが、かなり切れ落ちた斜面にある登山道で、道も大変狭く、すれ違うのもやっとの箇所でした。
「何処ですれ違おうかな~~~」っと思っていると、急に上部が騒がしくなってきました。
「うん?なんざんす???」
と思った瞬間、動物が2、3匹ガサガサしながら私の上部を走り抜ける音が聞こえた瞬間、大きな岩が2つ落ちてきました。
1つは、50cm前後の大きさの岩が、前方5m位に落ちてきました。
凄い大きな音と共に猛スピードで落ちてきて、そのまま川に一直線で落ちてきました。
「助かった~」っと思ったのもつかの間、もう1つ大きな岩が私の後方に落ちてきたんですが、途中にあった岩にぶつかったみたいで、1つから5個ほどに急成長して転がり落ちてきました。
落石が放射線状に落ちてきて、まさに旧日本軍の「三式焼霰弾」のような威力でございました!
え?三式焼霰弾が分からないよ!?
狩猟で使う、「散弾銃」を大きくした感じで、主に戦闘機などを広範囲に攻撃する対空兵器になります。
なんだかマニアックな話になってきたので止めますが、落石の場所と状況を絵で書くとこんな感じでございます!
え?アオヒゲさん、絵心が無さすぎだよ???
え?幼稚園から人生やり直したほうが良いよ???
え?むしろ、そのまま卵に戻ったほうが良いよ???
くぅ~~私は両生類ではないわ!!
むしろ、この力作を貶すとは!!!って感じではございますが、緊迫とした落石現場なのに見難くて申し訳ございませんm(__)m
ナスカの地上絵よりも解読困難な、「アオヒゲの地上絵」を解説しますと、左下の赤いのが私で、青いのがこちらに向かってきている登山者、緑の星が動物(鹿?)で、ねずみ色の丸いのが岩でございます。
九十九折の部分が登山道なのですが、登山者に驚いた動物が、私の方に逃げた拍子に岩を踏んずけ、それが落ちてきたと思われます。
落石に伴い、かなり凄い音がしたんですが、前方1、2m位の所に「大木」が斜面側に生えていて、そこに逃げ込みました。
焼霰弾の様に、大小さまざまな岩が落ちてきたのですが、逃げ込んだ大木に当たる事も無く、無事にやり過ごすことが出来ました。
岩が落ちてきた斜面を見上げると、30m前後の高さの所を動物が走って逃げたと思われ、岩の大きさにも驚きましたが、その「落石スピード」に圧倒されてしまいました。
動物は「鹿」ではないかな~っと思っているのですが、それなりに大きい動物ですので、岩を踏みつける力も強いですよね。
後方に落ちてきた岩も、大きさが30cm~50cm位はあり、顔がデカイ私と同じ位の塊が5、6個落ちてきました。
至近距離で落石を体験して思ったのは、
「こりゃ~ヘルメットしていても、駄目だろうな~~」
と、率直に感じました。
確かにヘルメットをする事により、頭部の防御力は上がりますが、それ以外の所に当たればひとたまりもないですよね~・・・。
今回、反対側は切れ落ちた崖で、もし1発でも落石を喰らってしまったならば、持ちこたる事が出来ず、そのまま滑落してしまい「アオヒゲの川流れ」になったと思われます。
助かったとしても、一人で動くことが出来ず、一気に進退窮まってしまうと思われます。
たまたま近くに大木があり、体を隠すことが出来たのが良かった感じですが、もし、歩くのが少しでも遅かったら・・・と思うとゾッと致します。
かなりの音がしましたので、コッチに向かっていた登山者も驚いたみたいで、合流した時に何が起きたかを教えてあげました。
「こわいね~~」
てな感じで半分笑ってましたが、ま~間近で落石を体験しないと怖さは分かりませんよね。
岩の大きさもそうですが、斜面の斜度や、落ちてきた距離とかで威力がだいぶ変わってきますよね。
?
危険な落石から身を丸対策について
そんな感じで、20年弱の滝巡り・登山経験から、「落石」で感じた事を自分なりに纏めてみたいと思います!
休憩する時は、周囲を確認する。
基本中の基本ですが、休憩する場合は、落石が起きないかどうか地形を確認し、危険が少ない場所を選ぶ必要があります。
危ないと感じた場所では立ち止まらず、早々に離脱する。
木々で覆われた斜面なら、ある程度安全であるともいえますが、山肌や岩肌がむきだしになっている斜面は要注意です。
また、登山の途中で「滝」があると、ついつい滝壷周辺で休憩したくなりますが、それも危ないことがあります。
滝の水しぶきに絶えず晒されている岸壁が脆くなっている可能性もありますので、注意してください。
落石を起こさない
落石を起こさないのは、登山中では当たり前の事ですが、靴を引きずって歩かない、登山道を外れて歩かない、無理やり追越さないが大事かな~っと思います。
小股で脚は上げ過ぎず、着地は静かに、地面に靴を置くように歩くのが「疲れない山の歩き方」と言われておりますが、これは「落石を起こさない歩き方」とも言えます。
また、登山道での行き交いは、原則として登りが優先です。
「登りが優先である」のは、ご存知の方も多いと思いますが、正確に書くと「登りが優先的に先に進めるのではなく、あくまで相手に『道を譲るか』、それとも『自分が先に進むか』の決定権があるだけです。
なので、下りの登山者が確認もせずに、ゴリゴリ進んでくるのは「論外(マナー違反)」であると言えます。
急ぎたい気持ちも良く分かりますが、この辺の登山のマナーは、かなり悪いよな~って個人的には感じております。
道を譲る時は、自分は斜面側に寄り、相手には崖側を歩いてもらいましょう!
また、岩場や浮石が多い所では、ストックを使うのは止めましょう。
ストックをついた所に岩があると、その反動で動いて落石を起こしてしまう事があります。
落石を貰わない
落石を貰いやすい場面としては、「鎖場」、「梯子」かな~っと思います。
特に鎖場は、登り降りしている時には近づかない、長い鎖であったとしても、先に使っている人が終るまで「登らない、降りない」が鉄則です。
笑えない話なんですが、1つの長い鎖に、3人の登山者が数珠繋ぎで登っている景色を見たことがあります( ゚Д゚)
落石以前の問題として「危ない」ですよね。
山を歩いていると、足元ばかり見てしまいますが、時々周りの景色や地形を確認し、微妙な所は間隔をあけることも重要です。
ヘルメットは落石対策に有効です
「ヘルメットしてても駄目だな~」ってな事を書いてしまいましたが、それでも装備してた方が安全です。
足を滑らせ滑落死をした中には、ヘルメットをしていれば命が助かった方が結構な割合でいるそうです。
落石・滑落の安全対策で有効ですので、特に登山者が集中し岩場のルート(北アルプス等)では装備したいアイテムだと思います。
現在、使っている登山用のヘルメットなのですが、1万円前後で購入でき、重さも330gで非常に軽いです。
追々、レビュー記事を書きたいな~っと思っておりますが、こんな場面でも大活躍でした!
登山道から滑落し、沢に落ちた時にヘルメットをしていたので致命傷を避けれました。
良かったらご参考にしてみてください。
落石を起こしたら、見かけたら
落石を起こしたり、歩行中に落石を目撃した場合は、大声で「ラーク!」、「落石!」、「アオヒゲさん大好き!」と叫んで、下に居る登山者に知らせてください。
逆に、歩いていた時に「落石」、「ラーク」という声を聞いた場合は、冷静に周囲を確認し、身を隠せる安全な場所へ避難してください。
安全な場所が無い場合は、ザックで頭を保護し、小さく丸まり、岩があたる面積を狭めて下さい。
最後の手段は、「神に祈りを捧げる事」かもしれませんが、これは日頃の行いに依存するので、有効かどうかは神のみぞ知る世界です。
まとめ
落石は、自分が気をつけても防げない部分もありますので、中々対応が難しいですよね。
落石を喰らった拍子に「滑落」とかになると、重大事故に繋がりますので、やはり「落石を起こさない、貰わない」に尽きますよね。
今回は、小屋番さん達の意見に耳を傾けなかった私の驕りに対する山の怒りだと紳士に受け止め、今後は注意しないとな~と、思っております。
普段から山の中で生きている小屋の方の意見と言うのは、やはり説得力がありますし、軽視してはイカンと思います。
H28年度の「山岳事故(遭難)統計」に載らないように、安全に留意してこれからの登山シーズンを楽しみたいもんですよね!!