- 遭難事故で救助要請!警察・消防とのやり取りについて
- 遭難事故で救助要請した現場について
- 遭難した場所と滑落した登山者、山の状況について
- 警察・消防との救助要請のやり取りについて
- 遭難事故現場に戻り救助について
遭難事故で救助要請!警察・消防とのやり取りについて
毎年必ず起こる「遭難滑落事故」ですが、その際お世話になる警察・消防とのやり取りについて今日は書いてみたいと思います!
救助要請の経験は、中々ないものですが、今回の出来事で色々と知る事ができました。
誰しも滑落事故や遭難になるような事態は避けたいと思いますが、気をつけていても起こってしまうのが山の事故の怖いところですよね。
遭難事故が起き、その後どのような過程を経るのか「顛末」を事前に知っておくのも、何か山の中で遭った時に慌てず冷静に救助要請が出来て良いかな~と思い、詳細に記したいと思います。
突発的な遭難事故や、滑落事故などが起こると、パニックを起こしてしまい、やる事なす事が全て裏目に出てしまうパターンもありますからね。
滑落事故を目撃したり、自分自身が遭難した時に求められるのは「パニック」ではなく「冷静さ」であるのは間違いないですよね。
なんだかんだで私は20年近く滝巡りや山登りを楽しんでいるのですが、その間、自分の目の前で2回ほど遭難事故を目撃し「第一通報者」の任を受けた事が有ります。
1つは山梨県の「西沢渓谷」で目撃したのと、もう1つは私のホームグランドである丹沢山塊で8年ほど前にあった遭難滑落事故になります。
西沢渓谷の方は、人間不信になる出来事が有り、まだ書きたくないので、今回は時効と思われる丹沢山塊の遭難事故について書きたいと思います。
書いてみたら大分長くなってしまったので、今回は前後編の2回に分けて載せたいと思います。
遭難事故で救助要請した現場について
今回遭難事故の話は、忘れもしない10月下旬の丹沢山塊表尾根に鎮座する三ノ塔尾根での滑落事故での救助要請になります。
こちらが滑落事故現場付近の現場の地形図になります。
遭難事故の場所は、☆印の付近になります。
こちらが救助要請をした、丹沢山塊の三ノ塔付近の地図になります!
三ノ塔は、標高もさほど高くなく(1,200m前後)、尾根が馬鹿みたいに長いコースですが、険しい箇所もほとんどないので「三ノ塔尾根で遭難事故?」と、思うかもしれません。(私でも同じように思います。)
しかし、「山の事故は場所を選ばずどこでも起こるんだな~」と、その時は率直に感じました。
遭難した場所と滑落した登山者、山の状況について
遭難事故があった当時は、ボチボチ紅葉が始まっていた頃で、その日は晴天で登山者も多く、14時頃に三ノ塔の山頂に着き、風も冷たく強かったので、早々に下山しようと大倉方面(登山口)に続く三ノ塔尾根を使って下っていた時になります。
三ノ塔の山頂から30分ほど下ると、前方に3名のグループ(男性1名、女性2名の計3名で70歳前後)が歩いていて、2名が先行し、1名(女性)が遅れて続いておりました。
どこかでその女性登山者を抜きたいな~と、思いながら後ろを歩いていたのですが、ちょっとした平地の部分で、先行する前の2名が遅れた女性を待つため立ち止まり、(下記参照)崖を背にしてこちらを見上げながら様子を伺っておりました。
だいぶ離れた距離が近づいたものの、その女性登山者と合流するつもりは無かったみたいで、先に進もうと男性が振り返った時に、後ろが崖であることを忘れていたのか、そのまま空中に1歩踏み出してしまい、そのまま崖に落ちてしまいました。
もしかすると、70代とやや高齢で、時間的にも疲れていたのかも知れません。
遭難した顛末を一部始終登山道から私は見ていたのですが、当初、そんなに深く切り込んだ崖だとは思わず、直ぐに這い上がってくるだろうと安易に思っていたのですが、いつまでたっても全然上がって来ませんでした・・・。
隣にいた女性が、崖下を覗き込むなり悲鳴にも似た声で「早く来て!!」と、助けを呼ぶ声がし、慌ててそちらに向かうと、崖下に居るはずの男性の姿が見えませんでした。
崖下を覗き込むと、30m位先まではなんとか見渡せる感じでしたが姿が見えず、それ以上先に落ちている事が容易に想像できました。
警察・消防との救助要請のやり取りについて
こりゃ~大変だ!っとなり、私だけではどうにもならんとすぐ理解し、消防に助けを呼ぶべく携帯の電源を入れてみると、案の定、電波は圏外でありませんでした。
ここから三ノ塔へ登り返すか、それとも携帯の電波があるところまで下って消防へ通報するか悩んだ結果、山頂に戻るのも1時間は掛るだろうし、着いたところで電波が有るかどうかも分からない。
とりあえず2時間歩けば下界に到着できるので、下山しながら携帯の電波を探す事にし、荷物をデポして遭難した方の名前と年齢、血液型を聞き、携帯片手に登山道を下る事にしました。
今思うと、お水も持って行くべきだったのですが、その時は慌てていたため・・・。
遭難事故現場から少し下りると、「ここは三ノ塔尾根⑤」の標識の周辺に電波が微かに有り、試しに消防へ通報致しました。
私
「丹沢山塊の三ノ塔尾根で70代の男性の方が滑落しました。見えない所まで落ちてしまって、ど~にもならいので救助をお願いします。」
消防
「もしもし、申し訳ない、こちら足柄上消防なのですが管轄外になるので、管轄になる松田警察に電話を転送するので、そのままでお願いします。」
警察
「・・・・、もしもし、滑落事故ですか?三ノ塔尾根のどこら辺ですか?あなたは同じパーティの人?あと、お名前と電話番号と状況を教えて下さい。」
私
「アオヒゲと申します。私は通りすがりの者です。3人パーティーの1人で70代男性が遭難事故を起こしました。私の電話番号は090-・・・・。滑落場所は三ノ塔尾根の標識の5番~6番の間だと思います。」
警察
「表尾根でなく、三ノ塔尾根ですね。ヘリコプターで吊れそうな感じですか?」
私
「遭難現場は深い崖なので、空は開けていると思うのですが、だいぶ落ちているので滑落者の場所が分からないんですよ。落ちた長さからすると、かなり怪我をしてると思います。」
警察
「ヘリコプターと地上からもチームを組んで遭難事故現場に向かわせますので、携帯の電波の届く所にいて下さい。充電は大丈夫ですか?」
私
「充電は大丈夫です。一回現場に戻りたいので、一時的に繫がらなくなるかも知れませんが宜しくお願いします。」
無事に警察・消防に救助要請する事が出来たのと、救助のヘリがくる事を伝えに遭難事故現場まで登り返す事にしました。
しかし、この滑落現場までの登り返しは水がなく本当に辛かったです。
遭難事故現場に戻り救助について
遭難事故現場に戻ると、滑落したパーティーの方とは別に3名の登山者がいて、その内の2名が滑落した登山者のすぐ近くまで行って介助しておりました。
後から話を聞くと、私が荷物も持たずに走って下りてる姿を上から見ていたらしく、ただ事でないと思い直ぐに駆けつけてくれたそうです。
ヘリコプターと地上から警察・消防の救助隊が向かっている事を伝え、現場近くに携帯電話の電波が繋がる場所が無いか探しまわってみました。
すると、滑落した崖の反対側の斜面に少し電波が繋がる個所がありました。
そこに大事な連絡手段である携帯電話をパーティーの女性に託し、私も滑落現場まで下りて救助のお手伝いをする事にしました。
すると、登山道から50m以上は落ちた所に、なんとか岩と木の幹に引っ掛かっている滑落者を、2名の登山者が寄り添い、落ちないように支えている姿がありました。
遭難現場は、かなりザレた急な斜面で、既に膝が笑っていた私は近づくと二次災害になりかねないと思い、遠巻きに滑落者の状況を確認し、救助要請した警察・消防の救助隊制や今後について、2人と情報交換をいたしました。
滑落事故をした男性は、意識があるものの、ウツラウツラとした状態で、頭と腕から結構な出血も有り、胸と腰も強く打ってるみたいで動けない(動かせない)状態で、しきりに寒いと言っていたそうです。
止血用と寒さ対策でタオルが欲しいとの要望があり、また、滑落した男性が「喉が渇いた、水が欲しい」としきりに言ってきているとの事で、登山道にデポしたザックまで戻ることにしました。
タオルと私のお水を取りに行き、それを飲ませて警察・消防の救助が来るまで動かさず、その場で待つことにしました。
滑落した登山者の怪我の程度がわからない段階で、お水を飲ませてしまった行為は、賛否が分かれますよね。
個人的には「水を飲ませない方が良かったかも知れない。」と、思っております。
そんな感じで長くなってしまったので、遭難事故で救助要請!警察・消防とのやり取りの続きは次回(後編)とさせていただきます。
長い長い救助のお手伝いの時間になり、その後も色々とありましてかなり大変な1日になりました・・・。