北海道大雪山で登山者と救助隊が滑落事故(村雨の滝)について
6月23日の午前11時頃、北海道の大雪国立公園内にある「村雨の滝」で江別市の助産婦の女性登山者(56歳)が滑落してしまい、頭や体を強く打ってお亡くなりになってしまいました。
まずは、お亡くなりになった方のご冥福を心よりお祈り申し上げます。
愛山渓温泉から入山して登山をされていたみたいですが、周辺には雪が多く残っていたそうです。
滝や渓谷沿いの登山道は、道が狭いうえに日陰になる部分が多いので、ルートや地域によってはこの時期でも残雪が残っていることが少なくないですよね。
また、村雨の滝付近に滑落してしまった女性登山者の救助に駆け付けた最寄りの消防署員の32歳の男性隊員が、救助途中に滑落して怪我を負ってしまったそうです。
滑落した隊員は、直ぐにヘリコプターで病院に運ばれたものの、現在、意識不明の重体との事で、治療中だそうです。
救助隊の2次災害の報を聞くと、いたたまれない気持ちになってしまいます。
一日も早く怪我から回復して、職場復帰して欲しいなと思っております。
不謹慎ながら、自分の不注意で滑落してしまい、命を落としてしまうのは、ある意味 「仕方がない」と思える反面、そんな不始末の為に他人様の命を危険にさらせてしまうのは、非常に申し訳ない気持ちになってしまいますよね。
北海道 大雪山系 村雨の滝周辺の詳細について
こちらが今回の滑落事故が起きてしまった、北海道上川郡上川町にある「村雨の滝」周辺の地図になります。
村雨の滝は、大雪山の北西に位置する永山岳からも近い位置にある滝になります。
今回滑落事故が遭った村雨の滝は、結構綺麗な滝で、訪れる方も比較的多いみたいです。
今回、滑落した登山者たちは、愛山渓温泉から入山して、イズミノ沢を上流に進み永山岳か五ノ沼湖を目指していたのではないかと思われます。
滑落した現場である北海道の「村雨の滝」周辺の地形がどのようになっているか、国土地理院の等高線を見て確認してみました。
すると、村雨の滝周辺は、かなり切れ落ちた地形をしてまして、ここで滑落すると50m~70m前後は一気に落ちしまうだろうと思われる崖になっておりました。
斜面をトラバース(横切る)するように登山道がのびてますので、村雨の滝付近の登山道に雪が残っていると、かなり手ごわい場所になる事が容易に判断することが出来ました。
今回、登山されていた方が、どのような登山装備を持っていたかは報道等でやっていないので分かりませんが、少なくとも雪が残っているならば、「軽アイゼン」で6爪くらいのスペックは欲しい場所だと思ってしまいました。
6月下旬ですので、残雪がないと思い、もしかするとアイゼンなどを持っていなかったのかな~と推測してしまいました。
残雪の渓谷歩きの怖さについて
今回、登山者と救助隊の2名の滑落事故がおきてしまった村雨の滝ですが、イズミノ沢という沢沿いに登山道が整備された登山道になります。
これから暑くなり、雪も消えて歩きやすくなれば、渓谷沿いを歩いて登山するには最高の季節になりますが、上述したとおり、谷にある登山道は日陰になる時間が長いので、どうしても雪がなかなか解けません。
私も過去に「滝巡り」をしようと思い、雪が残る時期に出没したことがあるのですが、思った以上に雪解けが進んでなくて撤退したことがあります。
無理すれば進めない事もなかったのですが、最近は、
「石橋を叩いて叩いて自分の足まで叩いてしまい動けなくなる」
ことを頻発してますので、無理はしないようにしております。
今回の大雪山・村雨の滝を歩いたことがないので、アレですが、私が山梨県の渓谷を登山していた時の状況と似ていたのではないかなと思い、少し載せてみたいと思います!
山梨県のとある渓谷にある登山道なのですが、4月頃に出没すると、まだ残雪が多く「通行止め」の処置がされてました。
この写真だけ見ると、多少、凍結や雪が残ってますが、歩けなくはないように見えますよね!?
私も「大したことはない。行政は責任取りたくないからいつも大袈裟に言うからな~!」と思い、「通行止め」を破って侵入しようかと考えてしまいました。
しかし、何度かこの渓谷沿いの登山道を歩いた事ががあるので、この先がさらに細く歩き難い場所があることを知っておりました。
通行止めの地点から、遠くに見える登山道の様子をみてみると・・・
なるほど・・・
この残雪はアイゼンがないと通れないな・・・。
残雪というよりは凍結だしな~・・・。
アイゼンなくても行けれそうだけど、滑って右の崖に滑落すると命はないな・・・。
無理はせず、ここで私は引き返しました。
写真には写ってませんが、さらに先はガチガチに凍り付いていて、ピッケルが欲しいほど残雪が登山道を覆っていて、邪悪な輝きを放っておりました。
渓谷沿いの登山道は、「岩清水」等で水が湧きだし、登山道に流れていることが多いですよね。
普段なら何でもない所も、寒い時期になると「凍結する箇所」に大化けし、非常に危ない場所になる事が多いです。
フラットな沢沿い歩きなら問題になる事は少ないですが、写真の様な斜面の中腹をトラバースさせながら歩かせる登山道になると、「滑落」が命取りになります。
雪がある斜面を下るのは、非常に技術が必要な行為ですが、それに「救助」が加わると、想像もつかないほど難しくなるかと思います。
普通の山登りもそうですが、特に沢沿いや渓谷歩きをする場合は、最新の登山道の状況を調べ、危なそうなら無理せず引き返すことが重要だと思います。
大雪山の村雨の滝の滑落事故とは少し違いますが、同じような渓谷である「山梨県の西沢渓谷」で目の前に登山者が滑落してきビックリしたことがあります!
その時は、比較的救助しやすい場所だったのですが、雪がない時期でも滑落事故は起こりうるものですので、十分注意しないといけませんよね!
その時の滑落事故の顛末を書いた記事になります。
個人的には、かなり嫌な目に遭ったので、あまり思い出したくない出来事になります。
世の中、冷たい人間が多いですが、それを知っているだけでも「登山の事故防止」につながるかと思い書いてみました。
良かったらご参考にしてみてください。
救助隊のリスクとまとめ
滑落した登山者の救助中に、救助していた方が滑落してしまうという多重事故に、色々と考えてしまいました。
「助けたい」
という一心で救助隊の方達は現場に向かったと思います。
ただ、救助隊といえども人間ですし、日頃から訓練していてもミスもします。
登山にはリスクがつきものですが、そのリスクに対応してくれる救助隊は、さらに高いリスクを背負っていると言えます。
自分の不始末に他の多くの人達の命を危険にさらさせてしまうのは、本当に避けたいことですよね。
今回の北海道大雪山の村雨の滝の滑落事故は、他人事ではないだけに、自分も教訓として胸に刻み安全登山を心掛けたいと思います。