登山中の道迷いと遭難について
今日は、山岳遭難事故の原因NO.1である「道迷い」について書いてみたいと思います。
前回の記事でも記載しましたが、山岳遭難の原因の約4割を占めるのが「道迷い」ですが、これは誰にでも起こり得ますよね!
今回は「何故道迷いを起こしてしまうのか!?」、「道迷いを起こさないために出来る対策!」について、私が登山で実践している事を書いてみたいと思います!
前回の遭難事故の件数について書いた記事になります!
最新の統計から遭難事故の原因と実態、傾向が分かります。
山の道迷いと街中の道迷いについて
山の中でなくても「道迷い」をしてしまうのが人間ってものですが、私は都内に出没すると、ビルばかりの景色に方向感覚がおかしくなり、迷ってしまうことがあります。
そして、お店の外に立っているオネーさんから声が掛かると、ついつい方向感覚がおかしくなり、薄暗い店内に入ってしまいそうになります。
また、「ポッキリ♡」と言う単語を聞くと、何故か方向感覚がおかしくなり、ついつい怪しげなオジサンの誘いに乗ってしまいそうになります。
さらに、「お帰りなさいませご主人様♡」と言われると、方向感覚がおかしくなり、ついつい「萌え萌えキュン♡」と叫びたくなってしまいます。
え???「確かにお前さんは『人生の道』に迷いが生じ、大人の階段を踏み外しているみたいだね!」ですと!!
返す言葉が見つかりませぬ・・・(苦笑)
道迷いの原因について
方向音痴と言うのは中々治らないものですが、「登山中の道迷い」の原因としては、ザックリ纏めると2つの要因かな~と思っております!
その2つは、
● 体力がない
● 登山の経験不足
と、思っております。
私自身、この2つを持ち合わせているかと聞かれると、非常に怪しいのですが、少し理由を書いてみたいと思います。
「体力がない」と、人間どうなるか!?に尽きると思うのですが、経験上「馬鹿になります」(笑)
疲れきってしまうと、正常な判断が出来なくなります。
「考えたくないし、考えたくもない」と言うスパイラルにはまり「ただただ休みたい」と言う短絡的な思考に陥ってしまいます。
簡単に書くと「思考停止状態」ですよね!
普段なら間違わない事も、疲労状態だと話は変わってきますよね。
疲れてくると視野が狭くなり、周りの景色を見る余裕がなくなってきます。
足元ばかり見ていると、大事な道標を見落としたりしてしまいます。
疲れてくると、余計な事をしたくなくなるので、分岐等で地図を広げ、現在地を確認しなければならないのに怠ってしまいます。
そして、疲れてくると一番怖いのが「自分の都合の良い解釈を始めてしまう」ことです。
途中、道間違いに気付いたとしても、「このまま進んでもどっかと合流するだろう。」、「あと少し進めば何とかなるだろう。」、「この方向で間違いない!」等、現実を直視できなくなります。
標高が高くなると、酸素も薄くなり疲労も蓄積しやすくなりますので、さらに道迷いのリスクが高まるのではないかな~と思います。
そして「経験不足」につては、敢えて書く事はないですよね。
「引き返すタイミング」や、「天候の判断」、「登山計画」、「装備」等は、ある程度経験が必要な要素ですよね。
語弊があるかもしれませんが、登山は戦争とよく似ております。
「戦力(体力・技術)」、「情報(天気・登山計画)」、「兵站(登山装備)」のうち、1つでも欠けると山頂を攻め落とせませんよね。
登山中の道迷いを防ぐ対策について
登山に必要なスキルとしては、「体力」、「技術」、「経験」なのは言うまでもないですが、どうしたら「道迷い」からの遭難を防げるかを自分が実践している事を書いてみたいと思います!
道標や分岐の写真を必ず撮る
頂上に着けば山名プレートと一緒に記念写真を撮ったり、美しい山の景色を撮ったりとデジタルカメラが大活躍しますが、「思い出のため」だけに使うのは非常に勿体無いです。
デジタルカメラは、撮った写真をその場で直ぐに見ることができますが、画像と一緒に「撮った時間」も保存されます。
デジタルカメラによって内容は違うんですが、こんな感じに撮影日時が表示されます。
道標や分岐の写真を撮っておけば、仮に道迷いをしたとしても、今いる場所から、分かる所に戻るまで「どれくらいの時間が掛かるのか!?」をある程度計算する事が出来ます。
道間違いに気がついたら「確かな所まで来た道を戻る」が大原則ですが、「戻るのにどれくらい掛かるのか?」が分からないと、自分勝手なイメージで「戻るの大変だから先に進もう」となってしまいますよね。
私は、道間違いに気がついたら、地図を広げ、最後に撮った「分岐(道標)の写真データ」と、今現在の時間を差し引いて間違って歩いてしまった時間を計算します。
仮に、最後の分岐の写真を撮った時刻が14:00として、道間違いに気がついたの14:30とします。
ザックリ30分間、本来計画してないルートを歩いてしまった計算になりますよね!
気付いた場所から確実に分る場所に戻るのに、登り返すなら負荷を考慮して「×1.5」とかで計算すれば、45分(30分×1.5)掛かる計算になります。
逆に、下りなら「×0.7」とかで計算すれば、約21分で戻れる計算になります。
算出した時間で戻れない場合は、何かが違う訳ですが、(大体は方角)それでも分かる所の近くに居る可能性が高くなります。
高度計と絡めるとさらに精度が上がるんですが、無い場合でも、迷った地点から戻るために計算をした時間(上記例だと45分・21分地点)付近を根気よく探すと、ルートに復帰できることが多いです。
コースタイムや道標に到着した時間を紙にメモしている登山者を時々見るんですが、「画像」と「時間」が分かるデジカメを使った方が、より効率的ですし、写真を見れば記憶も蘇り引き返すためのヒントになりますよね。
これで、何度も道迷いから脱出しておりますので、道間違いに気づいた地点と、山頂や道標、目立つものを見つけたら、積極的に写真を撮る事をお勧めしております!
何度も書きますが、道に迷ったら自分が分かる所まで来た道を必ず戻りましょう!
機種によって違いますが、キャノンのカメラの場合は、撮った写真をデジタルカメラの画面に表示し「DISP」というボタンを押すと「撮影時刻」等の画像データが表示されます。
初めて歩く道は、下りでつかわない。
Vルート(バリエーションルート)と共通するんですが、登りよりも下りの方がルートファインティング(正しい道を選ぶ技術)が難しいです。
山は下っていくほど地形が複雑になりますし、枝尾根や沢も出てきます。
そして、なにより樹木で展望が利きません。
樹林帯は同じような景色が続きますので、方向が分からなくなる事もあります。
初めて歩く道は「登り」で計画するだけでも道迷いのリスクを減らす事ができると思います。
悪天候が予想される場合は、山登りしない
天気が味方しない山登りほど辛いものはございません。
合羽を着込むとフードが邪魔をして視野が狭まり、大事な道標や分岐を見落としてしまう事があります。
濃霧になる事もありますし、暴風にさらされると視界がさらに悪くなりますしね。
バスや電車、宿等のキャンセル料が発生してしまうと、中々断念するのが難しいものですが、死んだらお金は使えません。
遭難したら、キャンセル料以上の救助費用の請求が来るかも知れません。
景色も見えず、全身ビショビショになり寒いだけの登山なのに、それでも登りますか?
早く出発し早く下山する
日が沈まなくても、山の中は暗くなるのが早いです。
樹林帯ですと、日没1時間くらい前から暗くて見え難くなります。
悪天候の時と同様に、道標や分岐の見落としをしてしまうので、最低でも日没前には下山するよう心掛けたいですよね。
もし、道に迷ってしまい、日没を迎えてしまったならば、下山を諦めて山の中をウロウロするのは止めましょう。
ヘッドライトがあったとしても、正規のルートに戻るの非常に難しいと思われますし、転倒したり踏み外したりして怪我のリスクが高くなります。
怪我をしてしまうと、さらに状況が悪くなりますので、早々にビバークの決断をし、雨風凌げて安全な場所を探すのが得策です。
遭難者の居場所が分からないまま日没を迎えてしまうと、基本、捜索隊も山には入りません。
自分が置かれている状況を理解し、冷静に対処する事が求められると思います。
※早々にビバークを決断したのが結果的に良かったのかな~と思っております。
踏み跡がなくなりクモの巣が多くなってきた
一般登山道の場合、ほぼ確実に「踏み跡」があります。
岩場や沢沿いだと怪しい場合もありますが、急に踏み跡がなくなりクモの巣が出てきたらならば道を間違えている可能性が高いです。
特に、顔付近(150cm以上)にクモの巣がつく場合は、直近で人間が歩いていません。
※鹿やクマは、150cmより背が低い(鹿の成獣は肩高80cm~130cm)
早朝だったり山域によってもアレですが、踏み跡もなく、クモの巣が多い所に入ってしまったらならば、道間違いの可能性が高いので、それ以上進まずに現状確認をして下さい。
体力をつけて道迷いの対策
知識や技術・経験も大事ですが、登山で一番必要なのは「体力」だと思います!
体力がなければ知識も技術も役に立ちません。
「道に迷ったら登り返す(沢を下らない)」が大原則ですが、日本の一般的な山なら400m登り返せばなんかしらの登山道や管理道に出る事ができると思います。
登山道を発見できなくても、頂上や稜線上に出れば景色が開ける事が多いので、目印になる物を見つける事ができるかも知れません。
逆に、登り返さずに下ってしまうと、たいてい沢に出ると思います。
沢沿いに下っていくと、必ずと言ってよいほど「滝」が出てきます。
ザイルもなく濡れた岩肌を下っていくのは、どんな熟達者でも大変難しい行為です。
滝を下っている最中に滑落してしまったら大怪我は勿論の事、最悪死んでしまいます。
仮に滝壺付近まで下りれたとしても、さらに先に滝があるかも知れません。
その滝の落差が大きく、それ以上進む事ができなくなると、滝と滝との間に閉じ込められてしまい進退窮まってしまいます。
そして、滝壺の周りは、落ちてくる水の風圧や飛沫で非常に気温が低いです。
寒い時期に、そんなところに閉じ込められてしまったら・・・
行程の後半で道に迷ってしまうと、体力的に登り返すのが厳しいですが、下らずに必ず登り返すことが大事ですし、それが出来る「体力」がやっぱり必要ですよね。
道に迷うとパニックになってしまい、「早く下山したい」、「早く分かる所に出たい」、と焦って下りたくなりますが、それが大変危険な行為である事を肝に銘じておいて下さい。
私も登山を始めたころに沢を下ってしまい非常に危ない目に遭っております。
どんな時でも、400mくらい登り返せる体力と水の確保が重要だと思っております。
ですので、ヘロヘロになるようなキツイ計画を立てない、調子が悪くなった時の為に「エスケープルート」を必ず計画に含めることも重要ですよね!
冒頭にも書いたとおり、体力がないと、遭難事故の色々な原因になってしまいます。
疲れてくると脚が上がらずつまずいて転んでしまいますし、「思い込み」をしてしまったり、行程に遅れが出れば日没を迎え真っ暗の中をヘッデン点けて歩かなければならず、道間違いのリスクにつながりますしね。
GPSもっていれば大丈夫、地図読みできるから大丈夫、と思っていても、山の中で迷ってしまうとパニックを起こし、本来持っている力を出せない時もあります。
自分の体力・技量に見合った山を選んで登る事こそが、道迷いや山岳遭難を防ぐ有効な手段なのかも知れませんよね。
まとめ
長くなってしまい申し訳ございませんが、微妙で使えない「小技」があだありますので、機会を見つけて「遭難防止」のお役になるような記事を少しでも書けたらな~と思っております!
これから秋の紅葉シーズンを迎えますが、遭難・滑落事故を起こさず楽しい時間を過ごしたいものですよね!
登山中の道迷いから生還するためにも大事な登山道具の1つであるコンパスについて書いた記事になります!
コンパスの使い方や雑学についても書いてますので、良かったら参考にしてみてください。