那須岳(朝日岳)の遭難事故と当日の天気について
栃木県の名峰那須岳にあります朝日岳で、登山中の4人が遭難しお亡くなりになる事故が発生いたしました。
まずは、お亡くなりになりました4人のご冥福をお祈りするとともに、ご遺族の方に謹んでお悔やみ申し上げます。
今回の遭難事故のニュースについては、昨晩、山仲間から教えて頂いたのですが、「朝日岳で遭難」と聞いたもので、東北の名峰朝日連峰の「朝日岳」か、北アルプスの白馬岳の近くにあります「朝日岳」、それとも谷川岳の白毛門の隣の「朝日岳」の事だと思っておりました。
ま~この時期ですし悪天候だったら遭難事故が起きてもおかしくないよな~っと思っていたのですが、今朝ニュースを観ていると那須町の朝日岳(那須連山)との事でビックリしました。
那須岳につきましては、初心者向けの「入門の山」として有名な所になるのですが、地形的な要因で「風の通り道」になる事から「強風の山」といったイメージが私は強かったりします。
15年近く前に那須岳へ登山に出掛けたのですが、あまりの強風でロープウェーが運休していて登山を諦めた経緯があったりします。
そんな登山入門の山で4人も相次いで遭難死するとは思いもしなかったもので、ビックリしてしまった感じです。
今回4人を死に至らしめてしまった要因としてあるのが「低体温症」になるのですが、、こちらはどんな低山でも起こりうるものですので、これから晩秋、冬山登山を楽しまれる方にとっては要注意だったりします。
そんな那須岳の遭難事故ですが、低体温症になるくらい天候が大荒れだったのか気になり、当日(2023年10月6日)の天気の状況を調べてみました。
※tenki.jpより引用
まず、那須岳周辺の天気は雨になりまして、宇都宮は晴れになります。
山間部と平野で天候が全く違う所が興味深いですよね。
また、前日(2023年10月5日)の天気予報も、同じような感じでしたので、登山された4名は「天気が悪い」と言った情報は持ち合わせていたと思われます。
※tenki.jpより引用
こちらが那須岳周辺の気温と風速、雨の状況になります。
那須岳(朝日岳)の麓に位置する「那須高原」の天気の状況になるのですが、最高気温が約14度、最低気温が約9度で雨量が6.5mm、風速11m/sでした。
これだけ見ますと、とても低体温症で4人もお亡くなりになるとは思えないのですが、あくまでも麓(下界)の状況ですので、山の上ではさらに過酷な状況であった事が伺えます。
那須岳には「ロープウェイ」がありまして、下界から簡単に山の中腹地点まで行くことが出来ます。
那須岳ロープウェイの山頂駅の標高が1,684mになるのですが、その時点での気温が4度、風速20m/sとかなりの悪天候であったことが分かります。
あまりにも風が強かったため、下山者用の下りのロープウェイのみ運行となりまして、その日は早々に運休となったみたいです。
かなりの悪条件の中で登山をされた4名ですが、「何故、低体温症になったのか?」、「遭難場所は何処か?」、「過去の那須岳の遭難事故」について今回は掘り下げてみたいと思います!
遭難事故が発生した場所と那須岳(朝日岳)について
こちら今回遭難事故死が発生した、那須岳(朝日岳)周辺の地図になります。
地図の通り、朝日岳は「那須岳ロープウェイ駅」から近い所に位置しておりますので、条件が良ければ比較的簡単に登ることが出来ます。
冒頭にも書きました通り、決して難しい山ではないのですが、判断を間違えると大変なことになってしまう所が登山の怖い所になりますよね。
※国土地理院から引用
そしてこちらが、今回遭難した4名の方がお亡くなりになっていた場所になります。
(赤枠地点周辺になります)
お一人の方は、熊見曽根方面、残りの3名は剣が峰方面に下った所で見つかりました。
憶測になりますが、お1人の方は、通年営業している「三斗小屋温泉」を目指したのかな~っと思われ、残りの3名は峰の茶屋跡避難小屋を目指していたと思われます。
ロープウェイ駅へ戻るにも茶臼岳への登り返しと距離があるので、峠の茶屋登山口(駐車場)で下山を考えていたのかもしれませんよね。
風が強く悪天候の時の登山は、本当に時間が掛かり、中々距離を稼ぐことが出来ませんので、途中で力尽きてしまったと思われます。
そんな遭難事故が起きた那須岳になりますが、実は「那須岳」という名前の山はありません。
那須岳は「那須連山」の総称になりまして、似た様なところでは「八ヶ岳」、「大雪山」と同じよう感じになります。
※八ヶ岳、大雪山という名前の山はありません。
そんな那須岳ですが、「茶臼岳(那須連山の主峰で標高1,915m」、「朝日岳」、「三本槍岳(主峰ではないものの標高が1,917mで茶臼山より高い」の総称を指すことが多いです。
また、那須岳は「活火山」になりまして、今でも火山性ガスがモリモリと噴出しておりまして、「無間地獄」が有名だったりします。
今回、遭難事故が起きた朝日岳の山頂付近は、全体的に岩場になりますので、木々がなく風が良く吹き抜ける場所であったのも低体温症の原因になるかな~っと思っております。
那須岳で低体温症になった理由について
悪天候ではあったものの、標高も2,000m以下と低い山で遭難し、何故、低体温症になってしまったのか!?と、興味がある方も多いと思います。
この時期でも低体温症になってしまう理由について書いてみみたいと思います!
まず、ロープウェイ駅の標高が1,700m付近になりまして、その時の気温が4度であったこと踏まえますと、十分低体温症になるリスクはある感じです。
低体温症の恐れがある時期に、登山する前に抑えておきたいのが「気温」、「風速」になります。
山頂付近の気温については、中々情報がなく悩ましい感じになってしまいますが、登る山の麓の気温からある程度推測することが出来ます。
気温につきましては、標高が1,000m上がると約6度下がります。
下界の温度が30度で、登る山の標高が2,000mだとしますと、山頂の気温は18度前後になります。
※12度ほど気温が下がる。
遭難事故が起きた日の宇都宮(下界)の最低気温が10度でしたので、1,000m地点で4度、2,000m地点でマイナス2度前後であると推測できます。
当日のロープウェイ駅の気温が4度(標高1,700m付近)でしたので、遠からず近からずな予想が出来たりします。
もし、私がその日に那須岳へ登山を計画したならば、少なくとも「冬山装備(防寒対策)」で臨み、軽アイゼンくらいあると安心かな?ってな考えで登っていたはずです。
また、風の強さも低体温症のリスクを高めてしまう要因になります。
風速が1m/s増すごとに、体感気温が1度下がると言われております。
風速が10m/sならば、体温温度は10度下がると考えなければなりません。
遭難事故当日のロープウェイ駅周辺の気温が4度、風速が20m/sになりますので、その地点で既に体感気温はマイナス16度前後になります。
それに雨が降れば体の表面の温度は更に奪われてしまいますので、低山である那須岳(朝日岳)であると言っても、十分過ぎるほど低体温症のリスクが高かったと推測できます。
ちなみに低体温症のリスクは、3分類にわける事が出来ます。
- 軽症 深部体温が32~35度
- 中症 深部体温が28~32度
- 重症 深部体温が20~28度
軽症の場合、「寒い」、「震える」、「力が入らない」等が初期症状になりまして、この時点なら温かい物を飲む、体を動かす、加温するで解消しますが、凍傷の恐れがあったりします。
一方、中症以上の場合は、自力での回復が困難で、医療機関に搬送されませんと回復は見込めません。
ちなみに中症以上の死亡率は約40%以上になりますので、侮れない感じです。
「気温」、「風」、「天候」は、登山をする際にとても重要な指標になりますので、必ずチェックしたうえで臨んでいただきたいなと思っております。
過去の那須岳の遭難事故について
那須岳の遭難事故と聞くと、「雪崩事故」を思い出す方も多いと思います。
私も「雪崩の事故があったよな~」っと思い出してしまったのですが、これから寒くなると注意しなければなりませんよね!
那須岳で雪崩?と、当時は思ってしまったのですが、どんな山にもリスクは必ずありますので、その点を考慮した上で登山計画を練る必要がありますよね。
6年前に起きた那須岳の雪崩の事故になりますが、まさか4人もお亡くなりになる事故が今年発生するとは、この時は夢にも思っていなかった感じです。
これからシーズンを迎える冬山登山の装備や情報、低体温症のリスクを軽減する為の服装などについて纏めた記事になりますので、良かったら参考にしてみて下さい!
まとめ
今回遭難事故でお亡くなりになった4名は、お気の毒ではあるものの、ロープウェイ駅に着いた時点の山の状況から、登山に適していないと判断が出来たのではないかと思っております。
つい最近まで蒸し暑い日が続いておりましたので「寒さ対策」が疎かにになっていた部分もあったかと思います。
また、お亡くなりになった4名の方の年齢を見ますと、70台前後の方が多く、体力の過信もあったのかな~っと推測してしまいました。
山は逃げませんし、悪天候時の登山ほど辛いものはありません。
山岳事故を教訓として自分の命を守る事こそが重要だと思いますので、引き続き無茶な登山はせず、安全に楽しめて行けれたらな~っと考えております!
遭難事故と聞くと「山岳保険」が気になる方が多いと思います。
登山の保険について書いてますので、良かったら参考にしてみて下さい!