2023年5月6日に笊ヶ岳で滑落事故発生について
今年のGWの後半は、風が強く天候が安定しませんでしたが、残念なことに2023年5月6日の南アルプスの笊ヶ岳で山梨県在住の40代女性が滑落する事故が発生してしまいました。
同行していた男性とも連絡が取れなくなってしまったとの事で、5月7日の朝から捜索が行われているそうです。
現地の天気を見てみると、結構雨が降っている状況でして、風も強いと思いますのでヘリコプターでの捜索が難しいと思われます。
また、笊ヶ岳は「山梨百名山」の1つに選ばれている名峰になるのですが、その中でも「最難関」と呼ばれている山の1つになっております。
山頂までの道中には山小屋や水場がなく、コースも長くて急登の連続なことから、日帰り登山ではかなり厳しく、残雪期にテント泊で登られる方が多いのも笊ヶ岳の特徴になります。
テント泊をする場合は、檜横手山付近か、布引山で幕営できるポイントがあるのですが、残雪期なら雪を解かして水を得られますので、GWに登る方が多い山でもあります。
滑落した方達は、昨日から2泊3日でアタックしたみたいですが、6日の天気予報からすると、7日、8日は悪天候である事が分かっていたはずですので、何故、無理して登ったのか理解に苦しみます。
後述しますが、笊ヶ岳のルートは、渡渉箇所がありまして、雨で増水すると川を渡ることが出来ません。
6日は問題なかったと思いますが、下山する8日は雨で増水し渡渉できない(帰れない)可能性が考えられますので、私なら絶対に登らないです。
※笊ヶ岳バリエーションルートである「ランカン尾根」なら渡渉なく帰れますが・・・
滑落ニュースの状況からしますと、ビバーク適地である檜横手山の手前に急な痩せ尾根のルートが多数ありますので、その辺で滑落したのではないかな~っと推測しております。
連絡が取れなくなった男性は、もしかすると助けに向かったのかもしれませんが、推測している地点での滑落事故ならば、かなり切れ落ちておりますので、助け出すのは厳しいのではないかなと思っております。
悪天候の中、捜索する隊員達も危険がつきまといますので、無事に2人を見つけられればなと思っております!
ちなみに笊ヶ岳では、毎年GWに遭難・滑落事故が発生してまして、お亡くなりになっている登山者が多かったりします。
過去の遭難・滑落事故については、下記の通りになっておりますので、ご参考になれば幸いです。
南アルプス笊ヶ岳で遭難した登山者について
今年のGWは、本当に天候に恵まれず、アチコチの山で遭難事故が多発しましたよね。
メジャーな山であり、3人の死者を出した北アルプスの槍ヶ岳の遭難・滑落事故が大きくニュースになったのは、記憶に新しいですが、個人的に気になっていたのが、上記の南アルプス笊ヶ岳の遭難事故になります。
記事の通り、2021年5月4日に、笊ヶ岳へ入山した41歳の男性が遭難し、行方不明になっておりました。
無事に下山してくれたらな~と思ったいたのですが、昨日(5月11日)、笊ヶ岳の山頂から4km程の所で遺体となって発見されました。
まずは、お亡くなりになった登山者のご冥福をお祈り致します。
私も遭難した方と同じ41歳になるのですが、同じ趣味を持つ同年代が山の中でお亡くなりになってしまうと、「残念だな~」と強く思ってしまいます。
ただ、登山した日の天候が悪かったのが、本当に悔やまれますよね・・・。
当初、この笊ヶ岳の遭難事故をニュースを聞いた時、正直
「また遭難があったのか・・・」
と思ってしまいました。
GWの時期に笊ヶ岳を目指して登山をする場合、老平から入山したと思われます。
私も過去に老平から入山して笊ヶ岳へ登ったことがあるのですが、中々ヤンチャなルートになってまして、滑落してしまった場所も何となく想像がつく感じです。
そもそも笊ヶ岳についてご存じない方も多いと思いますので、その辺を含めて、笊ヶ岳の登山と危ない箇所について掘り下げてみたいと思います!
笊ヶ岳周辺の地図と滑落・遭難現場周辺の様子と難関ルートについて
こちらが今回の遭難事故が起きた笊ヶ岳周辺の地図になります。
笊ヶ岳は、静岡県の山になるのですが、場所的には山梨県との県境に位置しております。
そもそも「笊ヶ岳」って読めないですよね!
私も最初漢字が読めなくて「つめけだけ」だと思い、無知をさらけ出していたのですが、「笊ヶ岳」と書いて「ざるがだけ」と読みます。
かなりマイナー感のある山になりますが、それでも標高が2,629mになりまして、強敵が揃う山梨百名山に選ばれている一座になります。
あくまでも個人的な感想になるのですが、笊ヶ岳への登山は、山梨百名山の中でも5本の指に入るくらい難関の山だと思っております。
山梨百名山のコンプリートを目指している方にとっては、今回遭難事故が起きた笊ヶ岳と、笹山、鶏冠山が、達成を阻んでいるのではないかと思ってしまいます!
それくらい笊ヶ岳への登頂は困難を極める難関ルートなのですが、その要因としてあるのが、急登、距離が長い、渡渉がある、水場がない、山小屋がない、登山道が分かり難いになります。
今回、遭難した場所が、笊ヶ岳の山頂から4kmほどの所になるそうですが、老平から入山していたならば、最後のきつい場所周辺で起きた事故になります。
こちらが笊ヶ岳の登山道の難所の1つである「渡渉箇所」になるのですが、写真の通り橋がありません・・・。
徒渉途中の写真(川の真ん中)になるのですが、流れも速くて水量も多く、私が登山した時は膝位まで高さもありまして、かなり難儀しました。
遭難死した方も、渡渉で苦労したんじゃないかな~と思ってしまいました。
そして、渡渉してから急登が始まるのですが、この登山道が曲者で、痩せ尾根の箇所が多くあったりと、中々気が抜けないルートが連続してある感じです。
こちらは、国土地理院からの出典になりますが、地図上の赤丸地点が渡渉箇所になりまして、山頂から4km地点となりますと、青枠の辺りで滑落したと思われます。
笊ヶ岳を目指し登って行くと、2,021mに檜横手山があります。
この周辺は、非常になだらかな場所になってまして、幕営適地になっております。
テント4、5張りくらいは大丈夫な平地が広がっているのですが(水場・トイレはない)、テント泊で笊ヶ岳登頂をする方がよく幕営する場所になります。
ここまでは急登ながらも道もシッカリしてまして、危ない箇所があるものの、手に負えないほどではありません。
ただ、GWの時期でも檜横手山の手前から積雪が出てくると思われますので、残雪具合によっては、危険度がだいぶ変わってくると思われます。
また、積雪が出てきて笊ヶ岳へのルートが不鮮明となり、過去には檜横手山周辺で道迷いから遭難する事故が発生しております。
私が笊ヶ岳に登る数ヶ月前?だかに、遭難事故があったのですが、その方は犬を連れて登山を楽しんでいたみたいでした。
道迷いをして滑落し、数ヶ月後に沢登をしている方がご遺体を発見したのですが、一緒に行動をしていた犬は無事に下山をしたと記憶に残っております。
今回も、同じような場所で遭難したと思われますので、GWに笊ヶ岳へ登山をする場合は、鬼門であると強く認識した方が良いと思います。
ちなみに檜横手山から笊ヶ岳(手前の布引山)への登山道の様子がこちらになります。
まず「かなりの急登である」のと、道が荒れていて切れ落ちている所がかなりありまして、滑落すると相当落ちてしまう感じです。
また、樹林帯になりますので、標高が高くなるほど積雪が深くなり、登山道の識別が困難になると思われます。
私は無雪期に登ってますが、「これで雪があるとかなり大変だろうな~」と強く感じました。
遭難事故が起きた日は、天候も悪かったはずですので、色々な意味で難し登山だったと思います。
まとめ
笊ヶ岳は、山梨百名山の中でも屈指の難コースとして知られていることもあってか、登山する方はかなり少ないです。
静かな登山が好きな方にとっては、笊ヶ岳はまさに打ってつけの山になるのですが、その反面、何か山の中でトラブルが発生すると、人気がありませんので、助けを得る事が非常に困難な山でもあると言えます。
私が笊ヶ岳へ登山した時も、週末であるにもかかわらず、終日誰にも会いませんでした。
登山者が少なく静かな山は、それだけリスクも高くなりますので、特に残雪が予想されるGWについては、慎重な判断が求められます。
笊ヶ岳へ登るのは、体力も必要ですし、ルートファインディング、冷静な判断など、登山の総合力が試される登山になると思います。
積雪に笊ヶ岳へ登る場合、個人の意見になりますが、単独山行は避けた方が無難だと思います。
登山サイトや個人のブログで「笊ヶ岳登山は難しくない」みたいなことを書いている人もいるみたいですが、登山の技量は言葉だけでは判断できませんので、自分のレベルにあった山へ登ることが遭難事故を防ぐ意味でも重要だと思います。
笊ヶ岳の山頂からは、南アルプスの景色が素晴らしく、私は大好きな山の1つになるのですが、今回に限らず過去にも遭難事故が起きてますので、十分注意して登山を楽しんでいただけたらなと思います!
日帰りで笊ヶ岳へ登山した時の記事になります!
富士山も綺麗で癒された一日になったのですが、きついルートに終始悶絶でした・・・。
今回のような遭難・滑落事故に備えて登山保険に加入が必要です。
色々な種類の山岳保険がありますが、1日に登山保険や年間登山保険の違いや注意点について書いてますので、良かったら参考にしてみて下さい!
笊ヶ岳の遭難事故と同じような時期に発生した槍ヶ岳、白馬岳、富士山の滑落事故について書いた記事になります!